コロナ下でポジティブな態度や行動を引き出すものは:コロナ下におけるマネジメントの実態調査

こんにちは。向日恒喜です。

コロナウイルスの感染拡大も一息つき、以前の生活に戻りつつありますが、皆さんはいかがお過ごしでしょう。このコロナ下において大きなストレスを感じた方が多くおられる一方で、この状況をポジティブに捉え、仕事のやりがいや人生の充実感を感じておられる方々もおられます。果たして何がコロナ下の状況の受け取り方を左右するのでしょうか?

先月、人的側面からの経営コンサルティングをされている「(株)カタドリ」が取り組まれた「コロナ下におけるマネジメントの実態調査」に関わらせていただきました。今回、その分析結果の内、特に仕事のやりがいや人生の充実感を左右する要因について分析した結果を簡単に紹介し、居場所の「役割感」、「安心感」、「本来感」の視点から考察してみたいと思います。

なお、この調査の報告書に関心のある方は、「(株)カタドリ」にお問い合わせください(ここでの分析結果は、報告書とは少し異なる分析方法をしたため、数字が異なっています)。

調査・分析・結果

調査の概要

調査対象:なんらかの組織に属し、複数名で業務遂行している方
調査方法:Google フォームのアンケート機能を用いて回答を依頼
調査期間:2020年5月10日(日)~ 5月18日(月)
回答者数:332 名

分析と結果

重回帰分析という手法を用い、緊急事態宣言下での仕事のやりがいや人生の充実感に影響すると思われるいくつかの項目の影響力を分析しました。その結果に基づき関連性の高い3項目と年齢・性別を抜き出し、さらに分析して得られた結果の内、影響力のある関係を示したのが以下の図になります。

・業務量:緊急事態宣言以降、業務量は増えましたか?(+方向:業務量増加)
・自身のチャレンジ:緊急事態宣言以降、あなたは業務上で新しいことにチャレンジしましかた?(+方向:チャレンジした)
・家族との関係:緊急事態宣言以降、家族との関係に変化はありましたか? (+方向:関係が深まった)
・仕事のやりがい:緊急事態宣言以前と以降では、仕事へのやりがいに変化がありますか?(+方向:やりがい増加)
・人生の充実感:緊急事態宣言以前とくらべて、あなたの人生は充実していますか? (+方向:人生充実)

「業務量の増加」と「家族との関係」の影響

緊急事態宣言下で業務量が増えると、仕事のやりがいを感じる一方で、人生の充実感は変化しない傾向がみられました。緊急事態宣言下で業務量が増えることは、仕事がない人もいる中で役に立っているとの感覚を生み、仕事のやりがいを引き出しているのかもしれません。

一方、緊急事態宣言下で家族との関係が深まると、人生の充実を感じる一方で、仕事のやりがいは変化しない傾向がみられました。家族との関係が深まることは、人間関係の基盤を築くことで、人生の充実感を引き出している可能性があります。

以上の結果は、緊急事態宣言下において、仕事のやりがいを高めるのは家族よりも仕事量、人生の充実感を高めるのは、仕事よりも家族であることを示しています。このことから、元々、日本企業が抱えていた仕事か家庭か、といったワーク・ライフ・バランスの問題が、コロナ下においてより明瞭になったと言えそうです。

「自身のチャレンジ」の影響

これらの結果に対し、緊急事態宣言下で業務上で新しいチャレンジをする人は、仕事のやりがいと人生の充実をともに感じる傾向がみられました。チャレンジできることが、仕事領域、生活領域双方に良い影響を与えているようです。

では個人がチャレンジできるようになるには何が必要となるのでしょうか。組織としては、従業員が失敗を恐れずに挑戦できる「安心感」を感じられる環境や、貢献を認めて「役割感」を感じられる環境を提供することが考えられます。一方、個人としては、他者に影響をされずに自己をしっかりと持つこと、つまり「本来感」を持つことが必要と考えられます。

「自身のチャレンジ」を高めるもの

この本来感を持つことの基盤として先述した家族との関係が重要な役割果たしている可能性があります。そこで追加の分析として、「業務量」と「家族との関係」が「自身のチャレンジ」に与える影響を、性別、年齢の影響も含めて重回帰分析で分析してみました。そして影響力のある関係を先の分析結果に加えたのが下の図になります。

この図を見ると、業務量の増加とともに、家族との関係が深まることが新しいチャレンジにつながる傾向がみられました。このことから家族との関係に基づく「本来感」がチャレンジにつながっている可能性が示唆されます。

自分らしさを持った社員を生かす

6月10日のブログ「様々な経験を通して自分らしさを築く」で、職場内外の生活の様々な経験を通して築き上げられた自分らしさが、職場において周囲の評判などを意識しない自律的な行動を引き出す可能性があることを述べました。今回の結果もまた、職場外の家族との関係が職場へのチャレンジにつながる可能性を示しています。

様々な経験や関係を通して自分らしさを築いている従業員は、自己の判断基準を持った個人であり、企業にとってはある意味、扱いにくい人材かもしれません。けれどもそのような従業員が、コロナ下で臨機応変な対応や、リモートワークでの自己管理が求められる状況において、自律的に行動し、またチャレンジする貴重な戦力になっている可能性があります。コロナウイルスをきっかけに大きな変化に直面している今、企業にはこのような人材を生かしていくマネジメントが求められているのかもしれません。

(向日 恒喜)

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